皆さんこんにちは。順天堂大学医学部免疫学講座の奥村です。
今回と次回の2回にわたり、免疫力をアップさせる生活習慣についてお話しします。なにも難しいことではありません。「笑う」だけでいいのです。
昔から「笑う門には福来る」といわれますが、笑顔を絶やさない人には、健康もやってくるのです。
健康番組をみると「たばこはダメ!」「お酒もダメ!」と真面目に「ダメなことがたくさんあって大変!」なんて考えていませんか?もちろん限度はありますが、自分の好きなことを我慢して人生を窮屈にするよりも、気楽に考えて笑って過ごす、「不真面目かな」と思うくらいが免疫をアップさせてくれますよ。人生笑って過ごしましょう。
最後に声を出して笑ったのはいつですか?
これまでの私のお話のなかにも何度か登場したNK(ナチュラルキラー)細胞。四六時中私たちの体内をパトロールし、発見したがんの芽を片っ端から潰してくれている頼もしい免疫細胞でしたね。
しかし、残念ながら、このNK細胞の働き(NK活性)は、ストレスなどによって簡単に下がってしまうのです。
逆に、ストレスを受け流して積極的に笑えば、NK活性は高まります。
免疫は、精神状態や心と密接な関連性があるのです。
あなたは日常生活のなかでよく笑いますか?最後に声を出して笑ったのはいつですか?「思い出せない」という方も多いのではないでしょうか。
日本人、特に男性は、にこにこ、へらへらしないことを求められてきたため、笑うことが苦手な人が多いように思われます。
NK細胞の働きは意識的に上げることができます
笑いがNK活性、つまり免疫アップをさせることは、学問的にも研究が進んでいます。アメリカでは1982年に「笑い療法学会」が発足していますし、日本にも「日本笑い学会」があるんですよ。こんなことをいうと洒落のようですが、世界中で、大まじめに笑いと健康についての研究がされているのです。
日本笑い学会が医師と共同で行った実験に面白いものがあります。
吉本新喜劇の漫才や落語をライブで楽しみ、その前後でNK活性を測定して比較するというものです。結果は、被験者18名中、測定不能だった1名を除いて、14名のNK活性が上昇したというものでした。
さらに、私の研究室でも、テレビの公開実験で70歳代のベテラン俳優さんのNK活性を測定したことがあります。この俳優さんは年齢的にもNK活性がかなり低かったのですが、ゲラゲラと大いに笑ってもらってから再度測定すると、なんとNK活性が10倍にも上がっていたのです。
どうでしょう。笑いの効用、無視できなくなってきたのではないでしょうか。免疫アップなんて難しい話ではないんですよ。
笑いと免疫のお話しは、次回に続きます。お楽しみに。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
どうかお身体を大切に、毎日を笑顔でお過ごしください。皆様の健康をお祈り申し上げます。
奥村 康
著者情報
奥村 康 先生
順天堂大学医学部特任教授
1942年生まれ。千葉大学医学部卒、同大学院医学研究科修了。スタンフォード大学医学部留学、東京大学医学部講師、順天堂大学医学部免疫講座教授、順天堂大学医学部長を経て、現在は同大学医学部特任教授(免疫学講座)・アトピー疾患研究センター長。ベルツ賞、高松宮賞、日本医師会医学賞などを受賞。サプレッサーT細胞の発見者。臓器移植後の拒絶反応を抑える新手法を開発するなど、免疫学の国際的権威。